なぜか子どもに激しい怒りや、強い不安を感じます

こっちが忙しいときに,子どもが遊んでいるのを見るとイライラして怒鳴りつけてしまいます。夜,布団に入ると,涙が止まらなかったりします。自分でも,なぜこんな感情になるのかわからないんです。

私が子どもの頃,親は私に厳しくて…。今,自分が親になって,子どもに同じことをしていると感じます。

子どもの頃は兄からのいじめがすごくて、よく殴られました。自分が親になって子どもに怒りを覚えたときに,なぜか兄を思い出します。

お子さんに対する『怒りや不安』などの感情のコントロールが難しいというお話は,子育て相談ではよくあるんだ
その原因の一つに,親御さん自身の過去の傷つき体験が影響することがあるよ
※記事中のご相談者さんのセリフや、ご相談例などについては、様々な子育て相談をごちゃ混ぜにした架空のご相談事例や、よく聴かれる「あるある」です。実在の事例ではありません。
『怒りの強さ』『不安の強さ』と,目の前で起きていることが一致しない不思議
後で思い返すと、『たいしたことではないのに,なぜこんなに不安になるのか』,『なぜこんなに怒りがわくのか』…と違和感を感じることがあるかもしれません。
しかし感情がわくその瞬間は,あまりに強い自分自身の感情に圧倒されて,どうにもならないと感じる方もいます。たとえお子さんがコップを倒しただけでも,怒鳴りつける理由はいくらでもあると感じる方もいるかもしれません。
「怒りたくない」と思っていても,自分自身の感情なのに,なぜか思い通りに行かない…。
それは,『思う』だけではコントロールしようがない,『脳と体』の反応だからかもしれません。
…その怒りや不安は,脳の誤作動かも
たとえば,子ども時代に厳しく育てられた方が大人になって,自分のお子さんのちょっとした失敗…,たとえばコップの水をこぼしてしまっただけでも,脳が『非常事態だ!』と感じて激しく怒り出すことがあります。
なぜ脳は,そんな取るに足らないことを『非常事態』と認識するのでしょうか。
それは,過去に強いショックを受けた時や,傷ついた時の心の反応が,突然,現在の子育て場面で呼び起こされるからです。
なぜ過去の傷つきが今の子育ての中で呼び起こされるのか
『タイムスリップ』する脳と身体

子どもを育てていると,自然と自分の子ども時代を思い出すものです。
意識的に,「こんな時,私のお母さんはどう対応していたかしら」と思い出すこともあれば,ほとんど無意識的に思い出していて,生まれ育った家庭などでのやりかたをそのまま再現していることもあります。
そして,自分で思い通りにならないのはこの『無意識』の方なのです。
過去のショックや痛みを「今ここ」のこととして誤作動する仕組み
たとえばあなたが自転車に乗っているとき,ほとんど無意識でハンドルやペダルを操作していませんか? 運転しながら「コンビニで何を買おうかな~」などと関係ないことを考えているかもしれません。このように,無意識とは,何も意識せずとも自動的に心身が反応することなのです。特にこのような体の動きというのは無意識によく支配されています。
想像してみてください。子どもの何気ない軽い失敗を見たときに,一瞬あなたの息は浅くなり,あなたの目はいつもよりも強くお子さんに引き付けられ,目の瞳孔が開きます。些細な反応ですが,これは興奮して怒りを感じたときの体の反応と同じなのです。自動的に,脳ではアドレナリンが分泌され,心拍が上がるかもしれません。
大して怒っていなくても,体が怒りと同じような反応をしたために,怒りのスイッチが入ってしまいやすくなります。子ども時代に,些細なことで怒られて育った方ならば,自動的に心身が反応して,お子さんに怒り出してしまいます。
あるいは、親に干渉されて育った方なら,強い不安を感じてしまうかもしれません。
親きょうだいからの嫉妬を受けた方なら,今の家族に対しても過剰に気を使ってしまうかもしれません。
このようにして、脳と体の反応によって、まるでタイムスリップしたような反応が起きるのです。
穏やかに、普通の声量で伝えればいいことなのに、なぜか大声で怒鳴ってしまい、止められない、そんなことが起きやすくなるのです。
こんなことはありませんか?
必ずしもみなさんに同じようなパターンがあるというわけではないと思いますし、むしろ一人一人に異なるストーリーがあると思いますが…それでも経験上『あるある』もあると感じています。
- 「早く食べなさい!」「残さず食べなさい!」「好き嫌いするな!」…などと執拗に言ってしまう ➡子ども時代に、食事の時間に怒る親の姿があった。
- 「泣くな!」「自分で考えろ!」…子どもの弱音を許せない気持ちになる ➡あなたを厳しく指導する親の姿があった。
- 「わがまま言うな」「ずるい」…子どもらしく甘える子どもに怒りを感じる ➡子ども時代、なかなか甘えられない状況だった。
- 「ほめることができない」…ほめた方がいいと言われるが、できない ➡子どものときあまりほめられなかった。
- 「お友だちと遊びなさい!」…お友だちとうまく関われているか過剰に気になってしまう ➡子ども時代、いじめを受けるなどお友だちと上手くいかないことがあった。
子どもにはどのような影響がでるのか
子どもにとっては、ほんの小さな失敗に対し、過剰に親に怒られるという経験になります。
ことあるごとに怒られたり、過剰に心配されたりして、自信を失っていくリスクが高まります。
「上手くいかない」という気持ちが募れば、当然ながら、お子さんは落ち込みやすくなり、ひどい時はうつ症状が出てくる可能性も高まります。
怒られやすく、ストレスを受けやすいお子さんによくみられる情緒的な問題には、チック(しつこい咳払いや首を振るなど)、強迫行為(着る服を決められない、潔癖など)、不登校・不登園、不安・過敏(親と離れられない、人がいるところに出られない)、親と離れられないなどがあります。また自信がないために、対人コミュニケーション面でもうまくいかない感じを持ちやすくなります。
なによりも、将来そのお子さんが大人になって子どもを育てるときに、子ども時代の傷つきから『タイムスリップ現象』を起こして、傷つきの連鎖を起こしてしまう可能性があります。
特に児童虐待の分野では、親から子へと虐待が連鎖していくことを『世代間連鎖』と言います。
過去の傷つきを癒やすための専門的な治療法
心・身体・脳へのアプローチ
過去の傷つき体験を癒すには、ただ考えたり本を読んだりするだけでは解決しません。
お医者様のところに行って、薬を処方してもらっても、根本的な解決にはならないため、カウンセリングが必要になるでしょう。
カウンセリングも、『タイムスリップ現象』や『トラウマ・過去の傷つき』を心理カウンセリングで扱うことができる専門性の高いカウンセラーでなければ難しいです。
「過去の傷つきの治療って…なんだか怖いです」

どんな治療法があるの?
過去の傷つき体験を話すのは嫌なんだけどな…

わざわざ話したくないよね…
傷つき体験を治療する心理カウンセリングは色々あって、どれもプログラムになっているから、「ただ話すだけのカウンセリング」とは違うんだ
プログラムの中で過去のことを話す時もあるけれど、まず最初は、安全感を感じる練習からはじめるよ
そしてやっぱり、トラウマの治療は、どれも「しっかり話す」ということが含まれるよ
代表的な傷つき体験を治療する心理カウンセリング・プログラム

たとえば厳しく育てられたことが今の子育てに影響している場合、心の中に、『厳しく育てた親』と『傷ついた子ども』がいるような状態なのです。それが、今現在の子育ての中で、タイプスリップしたように出てきてしまうのです。
カウンセリングは、心の中の『厳しい親』と距離をとって、『傷ついた子ども』の安全を守る、そんなイメージを『無意識』に持てるようにしていきます。
EMDR
EMDRは、トラウマ治療としてWHOでも効果が認められている代表的なプログラムで、世界的に用いられています。トラウマだけでなく、『タイムスリップ現象』や、心の葛藤などにも用いられます。
まずは練習をしてから治療が始まります。視線を左右に動かしたり、左右の手を順番にタップするなど、体の左右両側に刺激を与えながら、過去の傷つき体験を癒していきます。EMDR専門の研修を受けたカウンセラーが行います。
PE(持続エクスポージャー)
こちらもトラウマ治療としてよく用いられているプログラムです。
最初はくわしく問診をして、このプログラムが適応するかしっかり検討してから始まります。最初は、普段の生活で困っていることを具体的に対処する練習から始めます。そして、カウンセリングでは決められた方法に従って、徹底的に過去のことを語ることで癒していきます。PE専門の研修を受けたカウンセラーが行います。
EST(自我状態療法)
トラウマ治療、特に多重人格の治療で有名になった方法ですが、実際は心の葛藤や、ストレスによる身体症状(アトピーや体の痛み、感情コントロールなど)にも、幅広く用いられます。軽催眠を用いて、イメージの中で、心の中の傷ついた部分を癒していきます。ESTを実践するための専門研修があります。
専門的なカウンセリング・プログラムを受けたいとき
◆EMDR治療者リストは、日本EMDR学会のホームページで公開しています。
◆自我状態療法の国際認定資格者リストは下記のサイトで確認できます。
≫一般社団法人 Ego State Therapy Japan (EST-J)

自分でできる対処方法はないの?
根本治療ではありませんが、ご自分でできる対処方法はいくつかあります。
また、多くのトラウマ治療プログラムでは、最初は『自分でできる対処法』の練習から始まります。
どんな方法があるのかは、次回、くわしくお伝えしたいと思います!
まとめ::その怒りは、あなたのせいじゃないです!
復習になりますが、『怒りはあなたの心のSOS』です!
あなたが限界まで頑張ってきたから、つらい状況を必死で生き抜いてきたからこその怒りであり不安です。
もし怒りや不安を感じることがあったら、自分を責める代わりに、「これは私が一生懸命生きてきた証拠」と思ってみてください。
過去に辛い思いをしてきたという気づきは、変化を起こすチャンスでもあります。
一緒にこの連載で考えていきましょう。
今この瞬間、怒りが抑えられない、子どもに手が出てしまいそうな時
自治体の24時間電話相談や、LINEでの相談(匿名OK)を利用してみましょう。
専門的なカウンセリングとは違いますので、根本的な解決にはなりませんが、話すことで今この瞬間の怒りは落ち着いてくるかもしれません。
とりあえず今この瞬間の対処方法として、利用してみましょう。
話すことで気持ちの整理がついてくることもあります。
【24時間電話相談】
≫24時間子供SOSダイヤル(文部科学省)(フリーダイヤル)
電話番号:0120-0-78310(なやみいおう) 子どもまたは親が相談できる
≫児童相談所専用ダイヤル(フリーダイヤル)
電話番号:0120-189-783
【LINEでの相談】
≫親子のための相談LINE ニックネームで相談可。
次回は、今すぐできる簡単な対処法を紹介します
次回は『今すぐできる簡単な対処法【マインドフルネス実践編】』です。
感情コントロールの基本的な力を養うのにとても良い方法です。
一緒にやってみましょう!
≫今すぐできる簡単な対処法【マインドフルネス実践編】







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